小説「リプレイ」
最近ハマった映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」みたいなタイムループものとしてHelvaさんがお勧めだったので、古本で買いまして土曜の小旅行の車中ずっと読んでいました。
iPadで小説を読んでいて普通の本と違って戸惑うのは、「今自分の読んでいる物語がどのくらいの位置にいるか」がわからないこと。
本だと、厚みで大体わかるんですけどね。
物語が起承転結の「起」なのか「承」なのか「転」で盛り上がり部分なのか……真ん中をタップして、本の中のどの部分にいるか、思わず確かめてしまいます。
この小説では前半、かなり頻繁にしました。
一体、このお話はどこに向かうのか?
が読み取れなくて。
43歳の主人公が死に、次の瞬間18歳の時代にもどる。25年分の記憶を全部持って。それから……?
Helvaさんが紹介してくださったように、ある意味「のんびりした」話なのですが、本当に丁寧で……というのもリプレイのスパンがかなり長いので、繰り返しというより、本当に一回一回ジェフといっしょに人生を生きているようで、所々意識が飛ぶ……それは普通に生きている中であまりの日常風景にとけ込んでいるとか、緩やかな高速道路で車を運転している時にフッと気がつくと思っていたより遠くまできてしまっている感じ……この話、面白くなるのかなあ、とテンポの速い物語に慣れきったわたし(キングとかパーシー・ジャクソンに慣れすぎてた)には、ちょっとキツかったです。
でもね、最後には納得するわけです。
彼がエンディングにたどり着くのに必要なことは、その「退屈な記述」の中にあったと。
だからこその長さ、だからこそのあの「現象」なわけで。
途中から××××なってるって出た時にどういうことかと思いましたが、そうきたか〜と。
最後のあたりでは「やり直す」じゃなくて「無くなる」ことが重要で、しかも救いだったりしましたね。
う〜〜ん、緻密だ!
その中でジェフやパメラがたどり着く境地は、流して読んだのであんまり理解できてないと思う(ヤレヤレ)けど、強制的にそんな状態になれば、人間って色々考えちゃいますよね。
事故で生き残った人とか宇宙飛行士とか、特異な経験をした人が、決して前の生活に戻れないように、経験が人を変化させて、どこか哲学的な境地にたどり着く……。
だってね、必死に築き上げたものが、一瞬で消えるんだもんねえ、むなしすぎますわ。
それでも前向きになるパメラと、厭世的になるジェフは良いコンビだけど、人間って出会う時期で色々なんだと、ちゃあんと見せてくれるとこ、本当に上手い。
ケン・グリムウッドという作家さんは初めて知りましたが、凄いですねえ。
そして、著作リストを見て「ディープ・ブルー」という「スター・シー」みたいな話があったのでちょっと笑いました。そっかパメラとジェフは自画像のようなものかも、ね。
個人的に、一番気になったのはあの殺人鬼なんですが……あのあとどうなったかわからないのが怖い……つーか、キングなら絶対あの部分でかなりのページを割くよなあ。
キングと言えば、この間読んだ本「11/22/63」で、やっぱり60年代にトリップし、ケネディ大統領を救おうとする話で、時代が被りますねえ。
キングは、この小説にインスパイアされたのかも?
とりあえず、本人は「大学生の時に思いついて書きかけた」と書いてはいるんですけどね……まあ、設定と言えばありがちですが、この話ではケネディのエピソードはあっという間に終わるんで、単なる「時代の彩り」くらいの扱いですが。
……オチが同じだったりしてね(ネタバレ風味)。
まあそんなことは抜きにして、同じ年代設定で「タイムスリップ」でこんなに違う話が読めて、すごく得した気分です。
そうそう、80年代の現代人が見る60年代とミレニアムを越えた現代人が見る60年代の違いも鮮明で、面白かったですよ。
Helvaさんに感謝です!
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