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oniondiary | 日記。時々映画やドラマや小説のレビュー。最近はなんとなく毎日書いてますが無駄話多し。

本「ビッグ・ドライバー」

「ビッグ・ドライバー」



本当はもう三編加えた中短編集だったらしいですが、日本で文庫で発売なので二冊に分割されたみたいです。
あと三つは「1922」という本に入っているとか。(注文済)

さて、キングの短編……イヤイヤ、普通の作家の長編ぐらいあるしw
結構な分量なんだけど、やっぱり短いから彼らしくないのかなあ、なんて思いながら読んでいました。
小説の長さって、不思議。
特に、長さで世界を構築するタイプのキング作品では、長さ自体が「色」を変えるようです。

今回のこの本、キングにしては珍しく(?)、特異現象は出ません。
幽霊も超能力も宇宙人もなし。
ただ、主人公が日常からはみ出してしまうだけ。
本当に、どこにでも誰にでも起こりうる出来事。

TVをつければ言っていること……花火の帰り道で殺されて放置されたあの女性や、家族が家族を虐待して殺しそれを隠蔽したあの事件……報道されれば被害者(あるいは加害者)は本当にどこにでもいる普通の人々、日常を一歩踏み外すだけで、奈落が待っている……。

あれ、これって他の作家が山のように書いてきたお話だよね?
なんか、わざわざキングが書く意味はどこに?
だからか、センセーショナルないつものキング節は鳴りを潜めたかのようです。

予想してたより、酷くなかった。
……そう思ってしまうのは、キングを読みすぎたせいか……それとも自分も小説的残酷に毒されているのか……もっと直接的な描写があると身構えていたけど、実はなかったんですよね。
だからキングにしては……と思ってたけど、そうか、だからこそそれを避けたんだな、と後から気づくわけで。

そんな残酷描写なんて、他の作家がとっくにやっている。
わざわざキングが書きたかったのは、そこではない。
人が「傷つけられる」シーンを書くためではなく、傷ついた後復讐することによって「変わってしまう」人の話。

ちゃんと、被害者の心の動きを書いているんですね。
殺人鬼なんて、どうでもいい。
殺人鬼の生い立ちや動機などに、共感や同情など毛ほども感じさせません。
そりゃそうだ、被害者なんだから、主人公は。テーマは、

とにかく善良に生きてきた人生が踏みにじられた時、善良な人は善良でいられるのだろうか?

ってことで……実は、リアリティはイマイチありません。
本当に被害者に寄り添えば、こんな風にはならないでしょう。
レイプの被害者は口をつぐんで忘れてしまおうとするし、犯罪者の家族はひたすら隠そうとするし。
で、そんな小説もたくさんあります。
リアリティを追求すれば、そんな話になります。
でもキングは、あえてB級映画的な展開をさせます。(主人公がわざわざレンタルビデオ店に行ってその手の映画を借りてくるシーンまで入れている)
しかも、意外と簡単にことは運んでしまいます。

そして、復讐によって、自分が変わってしまったことを知ります。

二度と平凡な、でも善良な人間には戻れない。
二つの物語は、主人公の理解者を登場させて終わります。
少しだけ希望をもたせます。
だから読後感はいい。
けど、傷は癒えないだろうことは、予想させます。
本当の怖さはここから始まるのではないか……そんな二編でした。

ちょっと、個別にレビューしますが、以下にはネタバレが少しありますので、読んだ方だけお読みくだされば幸い。








ビッグ・ドライバー


「平和な」ミステリーを書く女性作家……ミス・マープルものや三毛猫ホームズ的なそれらは、犯罪を暴くことよりゲームを楽しむ感覚で読むための物語で、けっして残酷なレイプ殺人などのジャンルとはかぶらない……それなのに自分が「そっち」の被害者になってしまう皮肉。

自分のカーナビに名前を付けて会話する……そのうち猫とも、殺した加害者とも……そう、もう「このこと」について話せる相手は自分しかいない。
苦しい時、頼れる人はいない。
家族には(家族だからこそ)言えない。

この後、この人は前と同じ小説を書けるでしょうか。
書くかも。あえて。
ただ、どこからか「毒」が噴出しそうな予感があります。
わたしも小説を書く人間なので、実生活が小説ににじみ出てくる時の苦しさも少しはわかるつもりで……彼女の今後に同情します。


素晴らしき結婚生活


全部普通だけど「それなり」に幸せだった結婚生活の裏に、死体がゴロゴロ転がっていた恐怖。
良い夫で良い父親だった男が憎むべきシリアル・キラーだったとき、どうする?

……わたしでも、そうするかも。
疑いの余地なく、「保身」の為に。
特に子どもたちのために。
でもそれでは家族のために家族を見捨てた、あの尼崎の事件と同じになってしまいます。綺麗にまとめたところで、それは同じ。

鏡の中に別の世界があるように、奈落は見かけの世界の裏に潜んでいます。

彼女は鏡の「こっち側」に戻ってきた、と言っていますが、真実は鏡の「あっち側」……結局影の世界で生きることになるのです。





いやあ、フリがついたぞ!
このままガッツリ読書の秋が出来ればいいなあ。(読むのは激遅ですけども)



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Category : book
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