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oniondiary | 日記。時々映画やドラマや小説のレビュー。最近はなんとなく毎日書いてますが無駄話多し。

小説「日本沈没」読了。





もう二年近く前上巻を本屋さんで買い、下巻を昨年末にKindleでデジタル購入しました。
以前、



↑このコミック版を長男が購入していたので読み、やっぱり原作を読んでみたいと思ったわけで……コミックはあの東日本大震災の前に書かれたもので、小松左京の原作のコミック化というよりは、



↑の映画のコミック版の体をなしています。
しかし、主人公やヒロインなどの名前が同じなだけで、決してあの平板で退屈で中途半端な……沈没しない日本沈没なんてっ!……駄作映画のコミック化ではなく、かなり細部(沈没の構造や社会現象の予測)をつめてある、重厚なコミックでした。全13巻(?)にもなる大河小説のような作品でした。
ちょうど震災間もなくに読んだせいもあり、ちょっと精神的に来るものもありまして、レビューはしなかったんですが……どうしても原作を読んでみたくなりました。

……で、年月経過。。。

すでにコミック版も記憶の彼方です。
そういう意味ではまっさらな気持ちで読むことが出来たかも。
そして改めて、小松左京という作家のすごさがわかります。
なんという文章力。
高度成長期の時代性と現代にも通じる普遍性をあわせもって、しかも「今の日本」を読むものに考えさせるパワーは強烈です。

この間から二冊続けて日本の小説に挫折してまして……もう、退屈で読んでいられないんですよ……なんでこんなわかりきったどうでもいいことをくどくど書けるんだろうなあ、日本ってこういうの多いよね、小説でも映画でもドラマでも……もう翻訳文しか読めなくなってるのかなあ……とほとんど日本語アレルギーかもと思う状態だったんですが、そんなことはない、こんなに面白い文章、濃密な表現、それでいて文節一つで多くの事柄を語る力が、日本語にはあるんですよね。

以前はSFにそういう文学表現的なものを感じたことはなかったんですが、こんなにこなれた文章だったとは、中学生の頃のわたしは恵まれていたわけですね。

そんなわけでサクサクと、最後まで楽しみました。
「楽しんだ」なんて、不謹慎?
でも読みながら考えていたんですよ。
ああ、これがあったから、あの震災の時も、被災者がパニックにならなかったのかなあと。
それは作中で、いよいよ日本沈没が世間の白日の下にさらされようかとする頃、田所博士がTVのワイドショーで大立ち回りを演じ、「日本が沈没する可能性」を大衆の心の中に植え付けて、どこかで「気持ちの用意」をさせていたあのエピソードのようです。

この小説が初めて世に出た時、映画やドラマで大ブームが起きたとき、日本人みんなが考えました。

どうする? 本当に日本がなくなったらさあ。

それは一種のシミュレーション・ゲームでしたが、一応それなりにみんな考えました。
ここからだと高いところってどこかなあ。
渡るとしたら、韓国側かな。
どこに行くににしても、英語は必要だよね。
……当時わたしはまだ子どもだったから、助かる方法を考えましたが、ある年齢をいったひとは「このまま日本で死のう」とも思ったはずです。
日本中の人が、一度はその「可能性」を考えたはずです。

そういうとこ、日本人は悲観主義なのかもしれません。
いつか、悪いことは起きる。
それは自然のことだから、仕方ないのだと。
西洋的な「自然を屈服させる」開拓精神とは全く違う、「自然を受け入れる」国民性が発揮されるのかもしれません。
それがひいては、災害にあってもパニックにならず、状況を受け入れられることにもつながっていくのかも。

「日本が沈む」と書いたら、右翼的な反発がありそうですが、「日本列島が沈没する」となると、案外あっさり受け入れましたね、日本人。
どこか厭世的で、ちょっと仏教的な、諸行無常を知っている日本人だからこそ、受け入れられたのかも。

で、いよいよ沈没するその過程が……意外とリアルというか、東日本大震災の時東北から東京にかけて地盤がどのくらい動いたかという矢印が引いてあった画像を覚えていますかね? あれを彷彿とさせる動きかたで……当時の映画やドラマでそんな表現あったかなあ? なんかぶくぶくそのまま沈んでいってたような? まあ覚えていないんですが、「日本列島が折れ曲がりつつ太平洋側に引っ張られて飲み込まれる」という……文章で読んでいるだけでちょっと動悸がするようなスペクタクルな沈みかたでした。
それこそ地質学的なことは今とは全然違うのかもしれませんが、わたしにはもう圧倒的な迫力がありました。

国土を失った日本人のアイデンティティがどこにあるのか、作者はそれこそを書き上げたかったのか、第二部も(共著ですが)ありますが、あまり政治的なことに感心がないのと、人間ドラマが薄い(これは褒め言葉!)このエンディングが最適だと思うので、多分、読まないと思います。

いや、ホント面白い小松左京……他のも読みかえそうかな?




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Category : book
Tag : 小説 SF
Posted by onion on  | 4 comments  0 trackback

4 Comments

Helva says..."ぜひぜひお読みください"
ぜひぜひ読み返してみてください!
小松大人(こう呼ばせていただこう)の小説には小説という枠を超えた何かがありました。
こちとらも多感な時期wに読んだせいか、SFとしていかなる設定も可能であるがゆえに極限状態の人間を描けるという御大の持説に大いに共感いたしました。
SFのオールタイムベストを挙げろといわれたら必ず出すのが「果てしなき流れの果てに」
脂の乗り切った時期の(若書きだけど)作品で今読むと確かにもっと稠密な書き込みがあったらと惜しく思う反面、力技で押し切ったエネルギーをひしひしと感じます。
有限な生しか持たない人間が無限の時空を描ききることができるのか、そのごくごく一端のそのまた極小部分しか描くことはできないのではないかという懸念もなんのその。
いわく、知ろうとする意志は宇宙を超えるのであります。
奔流に流されるようなストーリー展開のちょうど中間に置かれた現実的結末、時間の流れの静謐さ、これが実感できる時間であり一個の人間が生きて終えていく時間だとしみじみ感じられるエピローグの見事さは今も最高に気に入っている箇所であります。
「日本沈没」も続編は御大の人間味ある文体と違うので途中で挫折したままです。
御大がなくなったときに読み返そうと本を出してみたのですが、どれもなつかしい。その当時わかるわからないは別として何度も繰り返し読んだことを思い出しました。
2014.01.13 01:19 | URL | #q6AO.T9M [edit]
onion says..."Re: Helvaさんへ"
> ぜひぜひ読み返してみてください!
> SFのオールタイムベストを挙げろといわれたら必ず出すのが「果てしなき流れの果てに」

おおっ、熱いレビューありがとうございます! これはぜひ読まなくては!
小松左京氏の本をたくさん読んだとは言えないんですが……「復活の日」とか「果てしなき流れの果に」は読みましたねえ。めっちゃ感動した記憶はあるけど、内容はイマイチ覚えていないし、このさい読んでみようと思います。
でも一番アタマに残っているのは「こちらニッポン…」です。代表作ではないかもしれないけど、突然外界から閉ざされた普通の人々が戸惑いながらも生き残ろうとする物語が好きなわたしのど真ん中ストライクで、これも読んでみたいです!

2014.01.13 09:51 | URL | #- [edit]
Helva says..."小松御大のこと"
「こちらニッポン」も面白いシミュレーション小説でしたね!
詳細を忘れてしまったので引っ張り出してぱらぱら、そうそう、最後に御大らしき傀儡回しの姿がほの見えたんでしたね。氏が大好きだった猫が出てましたっけ。
「エスパイ」の明朗でエスプリの効いた軽さを楽しみ、「復活の日」でパンデミックと負の遺産の核戦争に怖気をふるい、生き抜いていく人間に純粋に感動して、「継ぐのは誰か」で早くもwwwの世界の先取りと同じ年映えの若者たちに親近感を覚え、「虚無空間」でこの人はどこまで行くのだろうと行く末を見守ろうと思いました。
いろいろな企画に参画してマルチタレントを発揮しましたが、やはり小説家としての御大が一番身近に感じられます。
とてつもなくたくさんの遺産を残してくれたことに今さらながら感謝ですね。
2014.01.14 00:26 | URL | #q6AO.T9M [edit]
onion says..."Re: Helvaさんへ"
そういえば、御大って結構TVにも出演してらっしゃいましたね!
ほとんどヒッチコックのようなキャラだったような……w
多彩なだけに、わたしにはついていけない本も多かった気がします。
「エスパイ」はエッチだったようなw
そして「さよならジュピター」はとうとう挫折した記憶があります。
映画も宇宙エッチのところで挫折したかもw<つか、それしか覚えていない。。。

とりあえず、「こちらニッポン」と「果てしなき流れの果に」、それから阪神大震災のレポート「大震災’95」をAmazonで注文(中古w)しました。

> とてつもなくたくさんの遺産を残してくれたことに今さらながら感謝ですね。

本当に、読む本がたくさんあるって、人生の楽しみがあるってことですよね。
しかし、Amazonでさがして思ったんですが、代表作以外なかなか見つからないのは残念……こういう偉大な作家の小説こそ、データとしてちゃんとKindleに残しておいて欲しいものです。
2014.01.14 05:59 | URL | #- [edit]

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