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oniondiary | 日記。時々映画やドラマや小説のレビュー。最近はなんとなく毎日書いてますが無駄話多し。

コミック「なのはな 萩尾望都作品集」

コミック「なのはな~萩尾望都作品集」



Helvaさんお勧めのこの本、読んでみました。
それこそ昔、子どもの頃から大好きだった漫画家さんだけに、近年は遠ざかっていると言うか……「残酷な神が支配する」であまりの衝撃度だったので、最近新作を読んでなかったんですが……。

意外なことに、すごくストレートだなあと感じました。
同時に、ああ、これが少女漫画だ、とも。

以前「一年後の3.11」を紹介したときに思っていたのですが、こういう深刻な事態ほど、戯画……デフォルメを大幅にした絵の方が、向いているのではないかと思っていました。
元々1970年代から80年代、「少女向け」に発達してきた少女漫画は、大き過ぎなうえに光彩がキラキラ輝きすぎる瞳とあり得ない足の細さでありながらセクシーではない美しさを追求した絵で、万人受けをねらったものではありませんでした。
だから、漫画は読んでも少女漫画は読まない人が大勢いた……秋本治などの評論に上がって初めて注目されてきた(注目されるべき?)レベルの漫画と思われていた……今はどうか、全然知りませんが。

その「注目された一人」が萩尾望都で、少女漫画の中では異彩を放っていて、「それほど」大きくない瞳「それほど」リアルとかけ離れていないプロポーションで、けれどもストーリーとコマ運びは紛れもない最先端でした。
一時期コマ割にほとんど線を使わなかった頃があって、漫画家志望だったわたしは震撼したものです。ほんと、かなわないなあ、この人のレベルに行くのは、到底無理だな、と思ったものです。

けど、そうして少女漫画界以外から注目をされて、色んな作家が「少女漫画雑誌」以外にも描くようになって、そうすると一般の男性にも理解できるように「観念的」な部分が薄まっちゃった気がします。
成功したのは、山岸凉子かなあ。
彼女の独特なエッジの効いた絵は、ほとんどイラストとして受け入れられたし、ストーリーもわりと男性からも理解出来るものが多かったと思います。
(事実、ジェリーはこの人にハマったw)
そういえば遥か昔、山岸凉子も「パエトーン」で原発問題をとりあげましたが、あのときはいつもの絵ではなく、戯画的なポンチ絵wでした。
受け入れられるように、自分を自在に操れる人だったのだと、今にして思います。

なにせその辺りに結婚して、少女漫画も成人漫画も読まなくなったので、この萩尾望都さんがその後どんな漫画を描いていたのかあまり知らないのですが、万人向け……というよりSFファン向けに描いた「百億の昼と千億の夜」があの頃買った最後の本で、SFマガジンの読者欄だったかなにかで酷評されていたのを見た記憶があります。
わたしはあれは大名作だと思っているんですが、そのとき「ああ、男の人には理解不能なんだな」と思った記憶があります。
あれは光瀬龍の原作がありますが、世界は完全に萩尾望都のものでした。
無意味(と男性は思うであろう)キラキラを極力排した絵はシンプルで、シンプル過ぎて余白を楽しむ余裕のない人には手抜きに見えたかも。
でもストーリー運びは少女漫画そのものでした。観念的で、「あるべきものがあるべきところにあることを心で理解する」ことの出来る、女性(母性といってもいいかも)なら胸にコトンと落ちる、ガイア的な要素のあるストーリーでした。

……「なのはな」はやはり、ガイア的でした。
頭で考えれば、チェルノブイリの少女と福島の少女を重ねることで、福島の子が病気にかかって死ぬ暗示になるんじゃないかとか、今の時期に「帰って菜の花の種をまこう」とか無理なこと言うなよとか色々ひっかかるのですが、少女が大き過ぎる災害と喪失に心を引き裂かれているとき、胸にコトンと落ちる、自分だけじゃない、世界の中の自分の立ち位置を理解出来る、身を投げ出して子どもを産み、未来を守る母になることの出来る、自身が「種」になることの出来る女性ならではの、ストーリーでした。
絵もちゃんと望都さんらしくそのままで、この人は自分の世界をちゃんと持っているからこそ、変えずにずっと描き続けているんだなあと思い、深く感動しました。

作品集の中の「プルート夫人」などは、現実の茶番を茶番として描いた傑作ですね。初期萩尾望都のコミカルな部分がブラックに効いてていいですが、やっぱりあんまりセクシーでないところがw 

そして最後の「銀河鉄道の夜」では、祈りがあふれるようです。
「なあんにもこわいことは ないぞう」
とは、死者が極楽へいくことか、それとも生者にむけたものか。
わたしの家が浄土真宗だからかもしれませんが、死んだ人を「かわいそう」とはあまり思わないタイプで、死とは解放で、もう彼ら彼女らは苦しむこともない、永遠の浄土にいると思っているから、主に残った(残された)苦しんでいる人々に、「こわいことは ないぞう」と言って欲しい。


良い本を、読みました。
ふと本をとじて気がつきました。
真っ白な表紙の下、カバーを外すと一面の黄色い花でした。菜の花かな?





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Category : comic
Posted by onion on  | 2 comments  0 trackback

2 Comments

Helva says..."もーさまのこと"
さっそく読んで下さったんですね!(って、わたしの描いた物みたいにw)
お涼さまのパエトーンってのもありましたね(すっかり忘れてた、社会性の強いものにアレルギーあり)

>「残酷な神が支配する」であまりの衝撃度だったので…
同じです、残酷~以来少し距離を置いていたのですが、「バルバラ異界」でまたはまり直しました。
短編集「山へいく」の中の「柳の木」絶対おすすめです。恥ずかしながら何度読んでも号泣。onionさんのおっしゃる母性目線全開の名作です。

原発が林立する(大げさ?)地域に住むものとして、今何が何でも原発反対、原発が悪い、諸悪の根源というような短絡激意見が叫ばれるのを(もちろん反対ではありませんが)悲しい気持ちで聞いています。
それこそ放射能三部作に言われるように、放射性物質そのものが悪なのではないのでして、コントロールする力を持たないうちに力を解放してしまった人間のほうに問題があるのでありますね。便利だから使う、使いだしたらそれに依存してしまう。制御できないならあきらめるという決断ができない人間の姿勢こそ検証されなければならないのに。問題のすり替えになっていると警告しているようですね。
2012.04.01 22:22 | URL | #q6AO.T9M [edit]
onion says..."Re: もーさまのこと"
>Helvaさん
紹介ありがとうございました!
久々に読んだおもーさまでしたが(この呼び方懐かしいw)、ほんと変わらずすごいですね!
「バルバラ」ちょっと読みかけたんだけど、あの頃気持ち的に余裕がなくて2巻までです。またトライしてみますね。
> 短編集「山へいく」の中の「柳の木」絶対おすすめです。

おー、これも読みたい!
最近新刊ニュースなどに疎いままで過ごしてしまって、唯一読んでいるシリーズもの「エロイカ」も、すでに何巻まで読んだかわからなくなってます。
>放射性物質そのものが悪なのではない

そうなんですよね……。昔キュリー夫人の伝記映画に深く感動した覚えがあるものとしては、色々考えます。
「トイレのないマンション」とも言いますが、トイレの後の下水までも、それを浄化して海に帰すまでも考えなければいけないことを思えば、早急に過ぎたエネルギーだった気がします。
それだけやって、結局石油と同じ原理で動いてるんですもんね、蒸気機関車からそれほど発達してなくてガッカリです。

感覚的にわかる「間違い」が、頭だけで考える人にはわからないんでしょうかねえ。
2012.04.02 06:43 | URL | #- [edit]

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